2014年御翼9月号その3

山本五十六の聖書

  

 中国での利権を争っていた米国は、日本が邪魔であると、何としても日本と戦争をしたがっていた。しかし、米国との戦争を何とか回避しようとしていたのが、海軍元帥・山本五十六(兵学校32期)であった(元帥は、軍隊で最上級の階級)。明治、大正時代と、二度米国に駐在し、ハーバード大学にも留学したことのある山本は、その圧倒的な国力の差を知っていたのである。
 ドイツではヒトラーが台頭、そのドイツと軍事同盟を結ぼうという動きが日本陸軍から起こる。これに対し、反対を唱えたのが海軍大臣・米内(よない)光政(みつまさ)、海軍次官・山本五十六(いそろく)、軍務局長・井上成美(しげよし)であった。日独伊三国同盟に最後まで反対した山本を、右翼は国賊(国家に害を与える人)と呼び、暗殺の噂も流れた。
 井上成美は、青年時代洗礼を受けているクリスチャンであった。そして、山本五十六も聖書を読んでいたという。新潟県長岡市に、山本五十六記念館が平成十一年にオープンし、その展示物の中に、山本が駐米時代に入手した英文の聖書の現物がある。山本は、中学で英語教師をしていたニューエル牧師から感化を受け、キリスト教に親しんでいたのだ。ナチスドイツとの軍事同盟に反対していた三人のうち二人が、聖書を読んでいた。私たちも、その思いや願いが健全なものとなるように、日々、聖書を読み、祈ろう。

佐藤陽二『キリスト教入門』pp. 107-109  聖書の読み方
 世界的書物 聖書は今では世界の各国語に訳されており、その翻訳の種類は、千百をこえ、毎年三千万部以上が発行されている。そして、いつでも世界のかくれたベストセラーになっている。その理由は、聖書は、生活に必要な、知恵と力とを与えてくれるからである。生きる希望と能力とを与えてくれるからである。聖書は、人間の心の鏡でもある。
 役に立つ本 したがって聖書は、男性にも女性にも、大人にも子供にも、老人にも青年にも、また、順境の時も逆境の時も、いついかなるときでも、一生涯役に立つ書物なのである。「聖書は、すべて神の霊感を受けて書かれたものであって、人を教え、戒め、正しくし、義に導くのに有益である。それによって、神の人が、あらゆる良いわざに対して十分な準備ができて、完全にととのえられた者になるのである」(テモテ第二・3章16、17)とあるのは、この事実を言っている。
 聖書は、現世において、有益であるだけでなく、聖書によって生活していると、いつのまにか来世にたいしても、すっかり準備されるのである。こうして聖書は、世界のすべての人々に、真の幸福を与えてくれている。
 聖書を読む時の心得 このようなわけであるから、第一に、聖書は毎日読む必要がある。そして自分の読んで分かったところを生活に結びつけ、そこを足場にして、さらに読んでいくのである。このようにして、聖書を味わっていると、今まで分からなかったところが、誰に聞いたわけでもないのに分かってくる。第二に、自分の信頼できる先生や友人から聖書を学ぶ必要がある。そして、学んだところを、自分の生活で実験してみるのである。
 信仰を学ぶためには、新約聖書から読むことがよい。はじめに福音書、つぎに使徒行伝、それから手紙を読み、さらにあらためて新約を一通り読むのがよいようである。それから旧約聖書にうつるようにする。旧約は、新約の光で読む必要があるからである。
 心を開く 聖書は、原則的にいえば、どこから読んでもかまわない。しかし、聖書を読むときには、まず第一に「しもべは聞きます。お話しください」(サムエル記上3章10)とサムエルが言ったような態度をとるようにすることが大切である。そして、謙遜に心を開いて聖書を読み、自分で大事に思うような箇所に傍線を引くようにする。
 そうすると、その謙遜な心に聖霊が働いて、そのときに読者が一番必要な聖書の言葉を、神は与え、その人を導かれる。なぜならば、聖書はもともと神の働きの記録であり、神と出会うための媒体として記され、編集されたものであったからにほかならない。聖書は、そのような意図のもとに、聖霊の導きによって形成されたものであるから、子供や初心者が読んでも、重要なポイントを、とらえることができるようになっている。

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